自炊とWeb開発の意外な共通点。段取りと道具の手入れが生産性を決める理由

自炊とWeb開発の意外な共通点。段取りと道具の手入れが生産性を決める理由

2026/07/29
目次
開閉
コーヒーを片手にキッチンで一息つく様子

都内のIT企業でWebエンジニアとしてキーボードを叩き続けて20年。

仕事が終わってノートPCを閉じると、私はほぼ毎日キッチンに立ちます。外食やデリバリーも便利ですが、自分で食材を選び、包丁を握り、フライパンを振る時間は、ディスプレイを見つめ続けて疲弊した脳をリセットするための大切な日常のリズムになっています。

そんな自炊生活を長く続けていると、ふとした瞬間に「料理とソフトウェア開発って、本質的な構造がまったく同じではないか」と感じることが多々あります。

要求定義、アーキテクチャ設計、リファクタリング、そして道具の手入れ。今回は少し肩の力を抜いて、自炊とWebエンジニアリングの面白い共通点について考えてみたいと思います。

ミザンプラス(下ごしらえ)とAPI設計の相似形

フランス料理の世界には 「ミザンプラス(Mise en place)」 という言葉があります。直訳すると「配置する」「整える」という意味で、本格的な調理(火入れ)を始める前に、すべての野菜を切り揃え、調味料を小皿に計量し、必要な器具を手元に並べておく徹底的な事前準備を指します。

中華料理の炒め物などを想像すると分かりやすいですが、強火で加熱を始めてから「あ、醤油がない」「ニンニクを刻まなきゃ」と慌てて冷蔵庫を探していては、料理はあっという間に焦げ付いて破綻してしまいます。

これは、Web開発における 「API設計やインターフェース定義の先行」 と完全に重なります。

バックエンドとフロントエンドが連携するシステム開発において、エンドポイントのパスやリクエスト・レスポンスの型定義(スキーマ)が曖昧なまま勢いで実装(火入れ)を始めてしまうと、途中で必ず手戻りや手詰まりが発生します。

あらかじめ型を揃え、境界線を明確にしておくからこそ、いざ本番のロジックを実装するフェーズで迷いなく一気に駆け抜けることができるのです。

「作りながら片付ける」と継続的リファクタリング

料理が苦手な人によく見られる傾向として、「完成するまでシンクや調理台の上に洗い物やゴミを放置し、食べ終わった後に山のような洗い物を前に絶望する」というパターンがあります。

一方、手慣れた料理人は、煮込んでいる3分間やスープが湧くまでの隙間時間に、使い終わったボウルやまな板をサッと洗い、調理台を拭き上げます。料理が皿に盛られた瞬間、キッチンにはすでにほとんど洗い物が残っていません。

これはソフトウェア開発における 「継続的リファクタリング(ボーイスカウト・ルール)」 そのものです。

機能追加を優先するあまり「リファクタリングはリリース後にまとめてやろう」と先送りにしたコードベースは、まさに使用済みのフライパンや生ゴミで埋め尽くされたシンクと同じ状態です。後からまとめて片付けようとしても、膨大な心理的負荷とリグレッションのリスクが伴います。

新機能の実装ブランチの中で、触った箇所の不要なコメントを消し、変数の命名を少し綺麗にしておく。小さなクリーンアップを日常の動作に溶け込ませることこそが、長期的なスピードを維持する唯一の秘訣です。

Lowom 編集長 編集長
MEMO 道具への投資と手入れ
「切れ味の悪い包丁でトマトを切ると組織が潰れて旨味が逃げるように、重くて使いづらいエディタやターミナルでコードを書くと集中力が削られます。道具を手入れし、手に馴染む状態を保つことの重要性は、料理も開発も変わりません」

余り物の活用とモジュール設計

冷蔵庫を開けると、中途半端に残ったニンジンが半分、使いかけのベーコン、そして冷凍ご飯。こうした「限られたリソース」からパパッと美味しいチャーハンやスープを仕立てる感覚は、既存のモジュールやユーティリティ関数を組み合わせて新しい要件を満たす感覚によく似ています。

特定の料理にしか使えない特殊な調味料(過剰な独自フレームワーク)ばかり集めるよりも、塩・醤油・みりん・油といった基本の調味料(疎結合で汎用的なプリミティブ関数)の組み合わせ方を熟知している人の方が、どんな状況でも柔軟に美味しいものを作り出せます。

まとめ

エンジニアリングとは、何もコードやクラウドインフラの中だけで完結するものではありません。

日々の食事の段取りを考え、道具を慈しみ、作業空間を清潔に保つ。生活の中で培った「段取り力」や「仕組み化の習慣」は、巡り巡ってキーボードを叩く指先やアーキテクチャの設計思想にも確かに宿っていると感じます。

忙しい平日こそ、少しだけ時間を取ってまな板に向かい、トントントンと野菜を刻んでみる。そんなエンジニアの息抜きも、悪くないものです。

日々の道具へのこだわりや習慣づくりについては、以下の記事もぜひあわせて読んでみてください。

Lowom 編集長
この記事を書いた人:Lowom 編集長 現役Webエンジニア

都内IT企業に勤める業界20年のWebエンジニア。業務効率化・自動化スクリプトや快適な開発環境の構築、厳選したツール・ガジェットの活用法など、手元で実際に検証したリアルな一次情報をお届けします。

運営者プロフィール詳細を見る